Cliff Carlisle(クリフ・カーライル)

”スティール・ギターのパイオニアであるブルー・ヨーデラー” クリフ・カーライル(Cliff Carlisle)

1903年ケンタッキー州に生まれたクリフ・カーライルは、初期のカントリー・ミュージシャンとして重要な存在である。

曲を聴くと、ヨーデルを前面に押し出しているので、どうしてもあのジミー・ロジャーズと被ってしまう。ちょうど年代もジミー・ロジャーズや第一期カーター・ファミリーの少し後くらいになる。

ただ、ギタープレイに関しては偉業を成し遂げている。そう、カントリー・ミュージックにスティール・ギターを持ち込んで浸透させたからである。

そんなクリフは初期の頃、ウィルバー・ボールというギタリストと組んで”ヨーデル・カントリー・デュオ”と呼ばれていた。

1930年にケンタッキー州ルイビルのラジオ局で2人はデビューするが、この頃アフリカ系アメリカ人のブルースにヒルビリー、ヨーデルを組み合わせたような”ブルー・ヨーデル”という新しいジャンルが流行り出した。

その先駆者がジミー・ロジャーズと言われていて、3人は1931年に一緒にレコーディングもしている。

ちなみにアメリカでは、ヨーデル自体はもっと前の1911年にジョージ・P・ワトソンが「Sleep,Baby,Sleep」という曲で初録音に成功している。

 

『スティール・ギター』とは?

まあ一概にスティール・ギターといっても種類がいろいろあるので、簡単に一言でいうと”横に寝かして弦の上をバーをスライドさせたりして弾くギター”のことである。

ルーツ・ミュージックではドブロやナショナルのリゾネーター・ギターがわかりやすいと思う。


(出典:Wikimedia

こちらは現在世界的な名ドブロ・プレーヤーであるジェリー・ダグラス。

彼は主にブルーグラスをメインにしているが、プレイスタイルはご覧のようにボディを寝かせて弾いている。

それで、カントリー系のスライド・ギターのプレーヤーは彼と同じようにギターを寝かせて弾くのだが、その元はというと、19世紀にハワイから持ち込まれたスティール・ギターなのである。

昔のスティール・ギターというとだいたいこんな感じだろうか。


(出典:GAKKIソムリエ

リゾネーターと同様にバーを弦の上を滑らして弾く。

中でも当時アメリカ国内でも人気を博していた”ハワイアン”のギタリストとして第一人者であるフランク・フェレラやソル・フーピーなどの影響はかなり大きく、クリフ・カーライルもその1人であった。


(フランク・フェレラ)

フランク・フェレラは1924年にはヴァーノン・ダルハートと「Wreck of the Old 97」をリリースして、一躍アメリカ国内でその名を轟かせた。

そんなハワイアンのイメージがとても強いバーを滑らすスティール・ギターだが、その次に思い浮かべるのはやっぱりカントリー・ミュージックではないだろうか。

そしてそれほどのイメージを植え付けたパイオニアとしてクリフ・カーライルが果たした役割が大きいのである。

クリフは元々写真のように膝の上にスティール・ギターを乗せて弾いていたが、これをリゾネーター・ギターに置き換えたのである。そう、ちょうど上のジェリー・ダグラスの写真のようなスタイルを作り出したのであった。

つまり、現在カントリーやブルーグラス系の主流となっているリゾネーターのスタイルを作ったのがクリフ・カーライルといってもいいのである。

にもかかわらず過小評価されすぎな偉大なルーツ・ミュージシャンとしてここに記しておきたい。

 

 

曲紹介

クリフ・カーライルは生涯でなんと500曲!も書いたそうである。もはや本人でもどの曲かわからないような状態だと思うので、ここではその中でも彼のキーとなる代表曲や個人的に好きな選曲にしたいと思う。

ハワイアン・テイストの強いブルー・ヨーデルから、もろブルーグラスっぽい曲までカントリーの中でもバラエティに富んでいて選び応えがあるが、さすがに全曲聴いていくのは至難の技だ。

また、ブルース系に多い性的なダブル・ミーニングが結構使われているのもクリフの特徴である。

 

代表曲ランキング

クリフ・カーライルの曲数はかなり多いが、ここでは12曲に搾ってみた。

12位:The Girl In The Blue Velvet Band(1934年)

これは伝統的なカントリー・ソングである。というよりその元はヨーロッパからのフォークソングとも言われている。

この曲は後にビル・モンローやドック・ワトソンらもリリースしているが、最初にレコーディングしたのはクリフ・カーライルのこのバージョンである。

スロー目な曲で、スライド・ギターもヨーデルも入っていて、クリフの魅力が伝わる1曲だ。

重要度 2.5
知名度 3.0
ルーツ度 3.0
好み 2.0
総合 2.5

 

 

11位:A Mean Mama Don’t Worry Me(1947年)

1947年と遅めのリリースだが、もうほとんどブルーグラスである。というのもこの少し前頃にビル・モンローたちがブルーグラスを生み出していて、クリフもその影響を受けているのである。

冒頭からフィドルやマンドリンが一斉に絡んでブルーグラスの音世界を作っていてカッコいい。そこにクリフのドブロギターのスライドが絡んできていい感じになる。

さすがにカントリー界の重鎮だけあって、どんなスタイルでも彼らしく消化してしまうのがやっぱり凄いところではある。

重要度 2.5
知名度 2.5
ルーツ度 3.0
好み 3.0
総合 2.5

 

 

10位:My Lovin Kathleen(1936年)

マウンテン・ミュージックにドブロのスライドが入ってきて、ベースはカントリーなんだけど、少しアイリッシュぽさもある。

それからこの曲の特徴はずっと続くコーラスワークだろう。この男女によるハモリのヴォーカルは一方でゴスペルのようにも感じられ、なんとも不思議だけど個人的には好きな曲である。

ただ、あまりこの曲の情報も見つけられないので、相手の女性ヴォーカルが誰なのかは結局わからないままなのは残念だ。

重要度 2.5
知名度 2.0
ルーツ度 3.5
好み 3.5
総合 3.0

 

 

9位:Footprints In The Snow(1939年)

クリフ・カーライルが兄のビル・カーライルと一緒に組んだバンド、”バックル・バスターズ”でのリリース曲。ビルはヴォーカルとギターだが、マンドリンにはシャノン・グレイソンが参加している。

曲自体は19世紀の後半に作られたようだが、後にビル・モンローがやったことでブルーグラスのスタンダードな曲となっていく。

カントリーにおける歴史的なという意味で重要な曲なので、ここで上げておこう。

重要度 3.5
知名度 2.0
ルーツ度 3.5
好み 2.5
総合 3.0

 

 

8位:Shanghai Rooster Yodel(1931年)

この曲はイントロから気合い一発のクリフの単弦スライドが気持ちいい。彼にしては少し珍しいかな。

曲そのものはジミー・ロジャーズのブルーヨーデル・シリーズにありそうな感じだ。ジミーの影響をめちゃくちゃ受けているのがわかるし、歌い方や声までも似ていておもしろい。でも、ファルセットによる巻き舌の入った歌い方が雄鶏のつもりなのだろう。

また、この曲にはNo.2という別バージョンがあるが、個人的にはこっちの方が好きである。

重要度 2.5
知名度 2.5
ルーツ度 3.5
好み 3.0
総合 3.0

 

 

7位:It Takes The Old Hen To Deliver The Goods(1936年)

1936年のレコーディング・リリース曲。あまり情報がなく、詳細は不明だが個人的に好きな曲である。

ワルツ系の三拍子で、特にクリフのスライド・ギターがどこか物悲しい雰囲気があって良い。元々クリフ・カーライルの細かな情報自体が少ないこともあって、なかなか発掘するのは難しいのだけど、探していけば良い曲もあるからまたやめられない。

重要度 2.5
知名度 2.0
ルーツ度 3.5
好み 3.5
総合 3.0

 

 

6位:Black Jack David(1939年)

この曲は伝統的な民謡で、世界的にも有名な曲であるしカッコいいので上位にランクインさせた。

元はスコットランド民謡で「Raggle Taggle Gypsy」という曲である。ヨーロッパからアメリカに伝承される際に曲名が「Black Jack David」に変わっているようだが、基本的にはジプシーについて歌った同じ曲だ。

アパラチアの古いフォークソングにはヨーロッパからのバラッドなどの伝承曲が多く、このように曲名が変わっているものを”チャイルド・バラッド”と呼ぶそうだ。

「Black Jack David」は後にカーター・ファミリーがカヴァーをしてそっちの方が有名になっているが、アメリカで最初にリリースしているのはクリフのこのバージョンである。

重要度 2.5
知名度 3.0
ルーツ度 3.0
好み 3.5
総合 3.0

 

 

5位:When the Evening Sun Goes Down(1936年)

この曲もあまり情報がなくて詳細がよくわからないのが残念だ。おそらく同名の曲をリロイ・カー、カーター・ファミリーやヴァン・モリソンがカヴァーしているのでスタンダードな曲だとは思うけど・・・。

これはもう個人的に曲が好きで、特にヴォーカルラインが良いので上位にランクインさせた。どこか懐かしいような、やっぱり伝統的な有名な歌なんではないだろうか?

比較的クリフ・カーライルの曲の中でもマニアックな方だが僕は好きである。

重要度 2.5
知名度 2.0
ルーツ度 3.5
好み 4.0
総合 3.0

 

 

4位:Tom Cat Blues(1932年)

クリフ・カーライルの代表曲。彼らしくブルー・ヨーデルの素晴らしい完成度となっている。しかしこの曲はいろいろと調べていくと結構複雑である。

まず、クリフの曲に「A Wild Cat Woman And A Tom Cat Man」という曲があって、おそらくそれが元ネタになっていると思われる。歌メロなんかが同じだからだ。

それからこの曲名「Tom Cat Blues」というのはジャズにもブルースにもスタンダード的に存在している。同じ曲かと思ったが、聴くと全然違うから別々のところから発生しているのだろう。

また、クリフのこの曲が有名になったのは、1960年代にルーフトップ・シンガーズがカヴァーしたからであるが、他にもニュー・ロスト・シティ・ランブラーズやホット・ツナなどフォークよりのバンドがやっているのを聴いていると、どうもマウンテン・ミュージック系のアプローチ・カヴァーが多い。

極めつけは最近イタリアのフィンガーピッカーであるRoberto Menaboというミュージシャンがリリースした”The Mountain Sessions”というアルバムに入っているカヴァーが秀逸であるからここに上げておこう。

これなんか、もうピードモント系のフィンガー・ブルースで、昔のアパラチアでやっていてもおかしくないような出来である。僕としてはこのRoberto Menaboのバージョンが一番好きである。

重要度 3.0
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 3.0
総合 3.0

 

 

3位:Hobo Blues(1930年)

これもクリフ・カーライルの代表的な曲の中に必ず入ってくる。曲名の「Hobo Blues」はジョン・リー・フッカーが同名をリリースしていて、そっちのほうが有名ではあるが、クリフのバージョンもなかなかカッコいい。

聴いてもらうとわかるが少し変拍子でなんか独特なリズムだ。でもよく聴くとこれはロックンロールである。クリフのスライド・ギターは元々はハワイアンから来ているのだが、この曲なんかはもうアメリカンなスライド・ギターになってて、疾走感があって素晴らしい。やはり大陸を放浪するホーボーならではという感じだ。

おそらくこのスライド・ギターが後のブルースやロックンロールに少なからず影響を与えているんじゃないかと思える。

重要度 3.5
知名度 3.0
ルーツ度 3.5
好み 3.5
総合 3.5

 

 

2位:That Nasty Swing(1936年)

これも代表曲で、「あの厄介なスイング」というタイトルからも想像出来るが、ダブル・ミーニングのようだ。ダブル・ミーニングというと大抵は卑猥で性的なことを言っていて、ブルースでは当たり前のように出てくるが、この動画を観てもらうとそのへんはよくわかるだろう。

ウッドベースが入るツービートで典型的なカントリーソングだが、ミシシッピのオルタナ・カントリーバンドである”Blue Mountain”がヘヴィなブルース・ロックでカヴァーしていて、これまた変わった解釈でおもしろい。しかもその2001年リリースのアルバム・タイトルが『Roots』なのである。このバンド、機会があればどこかで掘り下げてみようと思う。

重要度 3.5
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 3.0
総合 3.5

 

 

1位:Goin’ Down The Road Feelin’ Bad(1933年)

結構チョイスに悩んだが、やっぱり1位はこの曲にしたい。

あまりにも有名なフォークソングでクリフのオリジナルではないが、彼の曲の中では最も有名だし、最も売れたようだ。曲自体はたくさんのカントリー系やフォークミュージシャンがカヴァーしまくっているので、特に書くこともない。ブルースでもたくさん見られるくらい猫も杓子も状態だ。

演奏自体はウッドベースをスラッピング(叩くように弾く)しているので、ロカビリーの前身とも言えなくはないので、そのへんの影響力も合わせてランキングのトップに持ってきた。

最初に録音されたのが1923年のヘンリー・ウィッターによるもので、フィドリン・ジョン・カーソンなんかもやっているようだが、このクリフのバーションはその次くらいに来て、ウディ・ガスリーなんかも手本にしている。そしてその後にグレイトフル・デッドなんかもやっている。

マウンテン・ミュージックからカントリー・ミュージックへの過渡期の曲としてとても重要である。

重要度 4.5
知名度 4.0
ルーツ度 4.0
好み 3.0
総合 4.0

 

 

 

 


出てきたタイミングもあって、ジミー・ロジャーズの影に隠れてしまいがちなクリフ・カーライルではあるが、今回改めてその存在感や功績の大きさに気付かされた。

確かにヨーデルもジミーが先駆者的なものだから、どうしても二番煎じな印象は拭えないが、そんなジミーが作り出したブルー・ヨーデルを確実にその後のカントリーの世界に浸透させたのはやはりクリフの活躍が大きい。

そしてそこへハワイアンからヒントを得て、スティール・ギターを進化させてさらにリゾネーター・ギターで弾くスライド奏法をカントリーの世界へ持ち込んだのは、大変な影響力を生み出しているのだ。

本当は世界的にも(特に日本では)もっと評価されるべき歴史的なミュージシャンであることは間違いない事実である。

 

その他の曲

生涯で500曲も作っているのでもちろんランキングの選曲には悩みまくった。ここに紹介しているだけでは全然足りないが、中でも一度は聴いて欲しいものを挙げておきたい。

・You’ll Miss Me When I’m Gone(1930年)

・Ash Can Blues(1932年)

・Seven Years With The Wrong Woman(1932年)

・Mouse’s Ear Blues(1933年)

・Chicken Roost Blues(1934年)

・Goodbye Old Pal(1934年)

・Pan American Man(1937年)

・Cowboy’s Dying Dream (1937年)

・Rocky Road(1937年)

最新情報をチェックしよう!
NO IMAGE
CTR IMG